バーチャルマーケット2ー第2の空間のビッグバンー

お久しぶりです。モスコミュールです。最近ブログやYouTubeに投稿がなく死んだかと思われてそうです。


さて、2019年3月8日から10日までVRChat上で行われた世界最大級のVR空間内展示即売会のバーチャルマーケット2がありました。規模は400サークルを超え、来場者数も今はまだ言えませんが、一日で武道館何個分も埋まりそうな人数来てたりしていて、もはや3D万博です。

 私はそのイベントの空間デザインディレクターとして役に就きました。が、主動スタッフが20人ぐらいなのでもちろん山のようなタスクが目の前に積まれていきます。私も自分のタスクを管理しながら他のスタッフの制作物のクリエイティブ管理とか無理の極みになってしまっていたので、そこは次回改善していきたいところでもあります(とにかくスタッフほしい)。

一応、ワールド制作のリーダーとして表立った顔をすると、今回はイベントにしっかりテーマを持たせる所から始まっており、それが「未来にログインしよう」なのです。そう。未来にログイン。皆さんは未来にログインをした感覚になれたでしょうか?できていなかったら私の力不足なので努力して何とかします。

デザインの面では、ジャンルを6つに分けそれぞれ違う世界として作ろうじゃないかという話が出た時点で各ワールドにある共通のモチーフをデザインに組み込み統一性を図ろうとしました。それが今回は「球体」です。皆さん各ワールドに主役となる球体が存在していたことに気づきましたか?


 未来にログインするにあたり、もちろん現実とは違う世界を描くことが最もわかりやすいですが、しかしSFすぎてもだめなのです。安易なSFはチープに感じることが多々あるからです。

(やるならとことん思いっきりSFに振ってても面白いが)ちょうどいいのは「日常の中に感じる違和感」。

あまりに空想的過ぎる発想や構造は、今まで我々が馴染んできた生き方や環境から大きく逸れた空間になってしまいます。VRの空間がこれから発展していけば、特有の空間構造や現実と大きくかけ離れた行動や生き方でも問題ないですが、現段階ではまだ「現実の延長線上」にすぎないので、ユーザーはそもそも情報として受け付けなかったり、酷いと今までの人間的行動ができなくなるので「困惑する」という拒絶反応に陥ったりします。だから現実と空想のいい塩梅に落とし込む必要があります。そこはVR空間デザイナーが頑張るところです。日常の中に感じる違和感というのがどの程度の違和感なのか難しいところではありますが、今回私は人間的な行動ができて慣れている空間や実際に見たことありそうな空間で起こるあり得ないけどあり得る話というところで攻めています。現実に存在するよく見るような空間上にただ浮かんだUIが並ぶとかその程度じゃダメです。


 唐突に自分語りします。私がデザイナーとして話を聞いた中で「あー、なるほどなー。」って思ったのはデザイン事務所nendoの佐藤さんの「あえてアンテナを張らずに自然体で日常を過ごし、その中で感じた"違和感"を大切にする。そこからイノベーティブな発想を得ることができる。」という言葉。無意識下で享受する環境の動きや情報というものは、自分が意識的に集めようとするフィルタリングされた情報よりも圧倒的に多く、またその中には発想の原石にもなるようなものがゴロゴロあるわけです。

無意識の発想といえばチュッパチャップスのロゴを手掛けたシュールレアリスムの代表格ともいえる画家、サルヴァドール・ダリの発想法も結構面白いのです。彼は発想を得るためソファーに横になり、床に瓶を置き、片手にスプーンを持ち、そのスプーンを握ったまま瓶の上に置きます。そして彼が眠りに入る瞬間、スプーンは彼の手から離れて瓶の中に入ります。その時の音で目が覚め、そしてそのまま寝ぼけた最もニュートラルな状態の脳みそで、思い浮かんだイメージを絵に描き起こすのです。つまり無意識の中にある情報を意識上に引っ張り上げる作業です。

 私は作業する際に色々と行き詰まると「そうだ、昼寝しよう。」と現実逃避を行いがちです。しかしそれが逆に幸いすることもあり、今回もそのパターンです。私は作業にあきらめをつけ昼寝を決行するときに「未来にログインするなんてありふれた言葉だからな~。どうやって表現するかな~」とか考えてたと思うんですが、部屋が明るいまま寝てしまいました。そしてふと起きて時計の針がまっすぐ縦に並んでいるのを見て、あーまたこんな時間まで昼寝したのかと思いながらベッドから降りたとき、「あ、目の前にVケットの入り口見えるわ」とよくわからない感想を抱きました。そう。なぜか私の頭の中には自宅にVケットの入り口が存在していてそのままマーケットに繰り出せると思ったのです。多分ね、VRをやる本質と近いの。だって自宅からログインしてマーケットに行くんだから自宅にVケットあるも同然じゃんって。

そこからさらに発想を整えていき、ストーリーとペルソナを立てます。「とあるVR好きの少年が眠っていたが、ある時轟音に叩き起こされた。目の前には光る謎の球体が自宅の屋根を突き破って落ちている。気になって近づくと、球体に吸い込まれてしまいワープする。その先はなんと別世界で、お店や色んな生き物で賑わう”街”を内包するクジラの上だった。あっけにとられた少年は街を巡るも、足を滑らせ落下。空を泳ぐうちに気づけば自室に戻っていた。夢かと思いきや未だに部屋には謎の球体がある。彼はすぐさま"Go to Virtual Market"と張り紙をして部屋の鍵を開けたままにし、再度球体に飛び込む。」とこんな調子で設定を組んだ結果、あのみんながエモいと言ってくれた入り口になったんですね。


 今回のこの表現で何がしたかったかというと、設定では現実の上で起きた出来事であり、それを追体験するのはユーザーであり、ユーザーはVR空間として入場するだろうが果たしてその本質は本当にバーチャルの上のものかというのを考えてほしかったという想いがあります。400もの団体、人として数えたらもっと大人数の人たちが丹精込めて目に見える形として表現した立体造形物というものは、直接触れるものでなくとも「表現をした」という事実を証明します。これってすごく尊いことで、今までこの世の中に存在しなかった存在を目の前で立証させ現実に顕現させる行為に他ならないからです。やっていることは創造主(原義的なクリエイター)と同等です。私はこんな機会に巡り合うことができて本当に幸せだと感じました。

私は創作活動というのが大好きで生まれてこのかた物を創らない時期がないぐらい物を創ってきました。これは私の周りの環境が恵まれていたからというのもあります。確かにそうです。

ですが忘れないで欲しいのは、創作をしているが下手だから初心者だから周りの評価が気になるからと思って自信がない、創作をやめようと思っている人がいたら、そのあなたへ。

あなたの行為は素晴らしい。

たとえ下手だから、初心者だから、周りがうるさいと思っていたとしても、あなたにはこの世の中に新たな存在を創生する能力があるわけです。そんな行為を何かにとらわれることで阻害されることは断じて許されるべきではありません。

あなたはもしかしたら相対評価に惑わされているだけかもしれません。相対評価なんて環境や時代が違えば全く変わるような不確定なレッテルにすぎないので気にせずのびのびできるように努力ができたら最高です。どうしても抗えない状況ならばそれは仕方ないと一旦仕舞っておく必要もあるかもしれません。ですが努力や勇気で何とかなるなら、あるいは考え方で環境や心境が変わるならぜひ創作の情熱を忘れないで行動してみてください。

あわよくばそれをVケットで私に見せつけてください。私はそれを楽しみにしていますし、私も私なりにあなたの活躍の場を用意させていただければと考えています。

 VRの上で起きていることだから虚像にすぎないしその上で開かれるただの展示会なんてコンテンツや文化になり得ないと思っているジャーナリストや学界や心理学者や保護者の皆様。もしそんなことを考えている方がいたらどうか考え直しを。

これは”本物”です。

どうせ人間は光として情報が入ってきて視神経で処理しちまえば何の媒体や方法でだって同じなので(もちろん他の4感も超大切だが)この世界は確実に実在します。

これはどうやっても拭えない事実でございます。

私はこの第二の空間に存在する博覧会を現実のサローネとほぼ同格として扱っています。制限や威厳の違いだけで本質は同じだからと考えているからです。


 さて、一人のおじさんの強い自己主張を見せつけるだけの駄文になってしまったかもしれませんが、話を戻していきましょう。

このバーチャルマーケットというイベントはまだまだ発展途上にあります。誰でも入れるわけではない。まだUI/UXが全然整っていない。デザイン的思考よりもエンジニア的思考が優先されるVR界隈。金銭的な話。権利的な話。プラットフォームの制約。動作が重い。問題は山積みですが、それを解決できる人たちが必ず現れるし、ユーザー単位で考え、改善することができるのもこの世界の強みでもあると考えています。時間はかかりますが、新大陸を開拓する感覚で秩序を保ちながら環境整備出来たら最高だと思います。私はただの1ユーザーに過ぎませんが、1人力分の力は発揮できるので確実に何かを推し進める力はあると思っています。経験的にもまだ浅はかで技術も最強というわけではないのでこれからも精進は欠かさずやっていきます。はぁ~強くなりてぇ~。

 

 ということでとりあえず私の所感を適当に綴ってきましたが、デザインの話とかは多分また別のところで深堀りすると思うので今回はここまで。

最後はVMエントランスに仕込んだ秘密の部屋で綴っている締めの言葉で。


「それでは『続き』をお楽しみください。」

MoscowMule Mode Design Studio

バーチャルクリエイター「モスコミュール」によるデザインスタジオ

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